Naoya Okada
(更新)
Hi guys!
今回のテーマは that の意味と使い方についてです。
さて、早速ですが、クイズです。
次の会話でAさんの「John が彼女と別れたんだ」に対して、Bさんの日本文をより自然に表している英文はどちらでしょうか。
① It is surprising.
② That is surprising.
答えは後ほど。
さまざまな使い方のある that ですが、その意味は大きく分けると2つあります。まずはその正体を確認していきましょう。
まず、that の主要な役割は「何かを指示する」ことです。その際、文中では形容詞・代名詞として機能できます。
形容詞として名詞を修飾することで「あの〇〇」「その〇〇」の意味。
単体で使う代名詞として「あれ」「それ」を表すことができます。
「ねえ、あの女性見て。彼女って陽子じゃないかなあ」
「あのスマホは好きじゃないな。」
「あれって君のスマホ?」
「A:ねえ、Netflix で人気のアニメ観よう」
「B:それはいいね」
①②では that が「あの」の意味で、それぞれ woman、smartphone を修飾しています。
③④の that はどちらもS(主語)の位置にあり、③は「あれは」④は「それは」となっています。
that といえば、「あれ」「あの」で物を指すイメージが強いですが、④ではAさんの発言を受けており、相手の言ったことを文単位でも that で示せることが分かります。
もう少し詳しくみてみましょう。ポイントは5つです。
that の本質は「心理的・距離的(物理的)な遠さ」です。
これは中学で学習するフレーズですぐに理解できます。
「これ見て」
「あれ見て」
心理的・距離的(物理的)に近いものを示すのに this を使います。
一方、日本語でもそうですが「あれ」は遠い。指差しがいるくらいに話し手から「遠い」のが that なんです。
この本質が「時間」的遠さにもつながり、例えば「その当時は」を英語では at that time や in those days と表現します(those は that の複数形です)。
また、指差しができることから、日本語にすると「あれ」だけではなく「それ」と解釈することもできます。「それ」は語や句だけではなく、文(センテンス)を指すこともできる言い回し。英語でも同様です。
「A:試験に合格したんだ!」
「B:それはいいニュースだね」
→ Aさんの発言(文)を全て that で受けているのがわかります。
さて、that が「それ」と考えられるようになると疑問点が生じます。
「that と it って何が違うの?」ということ。
押さえておきたい違いは以下の5つです。
それぞれ解説していきます。
→ that の本質通りですね。
→ it に比べて that は圧倒的に強いイメージを持ちます。that は指差しです。だから注目されます。
また it は人称代名詞と言われ、he や she などと同じグループ。この人称代名詞、とても情報の価値が低いんです。なくてもいいような存在で、会話では頻繁に省略されます。
一方で that は指差し。注目を集めるので強い。さらに心理的距離を表せる that は「感情」ものせることができます。「それはお気の毒に」は That’s too bad./I’m sorry to hear that. であって、It で置き換えはしません。
→ 通常、直前文の内容をSで受ける場合は it ではなく that を使います。
ここから、すでに登場済みの具体的なものは it で、文全体は that で受けることが多いというルールも導きだされます。冒頭のクイズに戻ってみましょう。
① It is surprising.
② That is surprising.
答えは②の方が自然です。主語にある「それ」が示す内容はAさんの文全体。だから that。また、Bさんの発言は驚きという「感情」がのっています。感情がのれば that の方がいいんです。
→ 「アメリカの人口は日本の人口より多い」を表す英文を例にとりましょう。
「アメリカの人口は日本の人口より多い」
that は The population を受けています。繰り返しを避けるため代名詞が使われています。
of Japan(日本の)で修飾されるので it は NG。it は他の語句で修飾することができないからです。
「それほど」の意味で副詞として使うこともできます。主に否定文や疑問文に登場し、形容詞や副詞を修飾します。
「この問題はそれほど難しくないよ」
5は「こうと言ったらこうだからそれ以上話しても無駄!」といった意味のイディオムです。that の本質的な意味が惜しみなく出ていますね。もう決まっているから「距離感」をとりたいし、話したくないから「感情」がのっています。
6の直訳は「あの船が出港しちゃった」ですが、こちらも「距離の遠さ」がしっかり出ている表現です。
さて、ここでは節を作る that を整理していきます。
S(主語)+V(動詞)のかたまりのことを節と言います。
接続詞としての that は、主に「名詞」節を作ります。名詞なので、S(主語)、O(目的語)、C(補語)の位置に置くことができます。
一方、関係代名詞としての that はそのネーミングとは裏腹に、「形容詞」節を作り名詞を後ろから修飾します。
「そのスマホ高すぎだと思うよ」
「これは私が手にした初めてのスマホなんです」
①では、that ~ expensive が名詞節となり think の O になっています(接続詞)。
一方②では、that I got が smartphone を後ろから修飾しています。なので、smartphone that I got を日本語にすると「私が手に入れたスマホ」となるわけです(関係代名詞)。
それでは接続詞、関係代名詞を順番に見ていきましょう。
接続詞とは、and(そして)や but(しかし)等のように語、句、節同士を繋ぐ役割を持ちます。
「サラは英語を、リオはフランス語が話せる」
この例文では、Sara speaks English と Rio speaks French という2つの文が、接着剤のような役割をした and でつながっています。
この that のポイントは3つです。
that S V の形で名詞節を作るため、意味は「SがVするという『こと』」です。
S、O、C に置けます。
「私たちがもっと労働者を必要としていることは明らかだ」
→ That ~ workers までが S
「そのスマホ高すぎだと思うよ」
→ think の O
「問題なのはその政策がうまくいっていないことなんです」
→ that ~ working が C
先ほどの【O の例】で分かるように、動詞 think の詳細は that の後ろで説明されます。
したがって、I think that と聞こえたら、「今から詳しい説明がくるな」と思えば OK です。
that節 の中身は、それだけで使っても文意は成立します。【S の例】なら we need more workers だけで十分に伝わりますね。
【O の例】は、文型を考えていくと、I=【S】、think=【V】、that the smartphone is too expensive=【O】 なのですが、 that はそもそも接続詞というつなぎ語ですから、次のようなイメージでとらえるとよいでしょう。
関係代名詞 that の確認の前に、関係代名詞とは何かをザッと整理しておきましょう。
関係代名詞とは、代名詞を関係代名詞に変換することで2つの文を1つにつなぐもの。
接続詞のように1つにつなぐ=関係づける。これが関係代名詞のネーミングイメージです。
「福岡に住んでいる娘がいるんだ」
日本語で考えると分かりますが、これくらいだったら2文ではなく1文で語ったほうがスマートです。
そこで登場するのが、関係代名詞。
「福岡に住んでいる娘がいるんだ」
元の英文では S(主語)の位置にある代名詞の She が、関係代名詞の who になっています。これで2つの文が1つにきれいに紐づきました。
このように説明するとちょっと難しく感じるかもしれませんが、英文での関係代名詞の役割はシンプル。
関係代名詞は「人や物といった名詞を説明する」役割を担うもの。
名詞の説明は形容詞によってなされますので、関係代名詞がつくるかたまりは形容詞節ということになります。日本語と英語とで位置関係が違うので注意が必要です。
日本語では「福岡に住んでいる」が「娘」を「前」から修飾、英語では逆で、 who lives in Fukuoka が daughter を「後ろ」から修飾します。
以下が、関係代名詞としての that の特徴3つです。
関係代名詞 that は本当に便利です。
「福岡に住む友人がいるんだ」
「あの人が私のお気に入りの男性なの」
「ここはラーメンで有名な都市なんだ」
「ここが私が行きたい場所なんだ」
どの関係詞を使うかの1つの基準は、修飾される名詞(=先行詞)。
「人」なら who/whom、「物」なら which を使いますが、that は万能で「人」も「物」も両方OK。
よって会話中に頭の中で「人だから…物だから…」と考える必要がなく、超楽。それが that です。
関係代名詞は、主格(=主語の役割)なら who/which を、目的格(=目的語の役割)なら whom/which を使います。別の言い方をすると、関係代名詞の後ろの文の S が抜けている場合は主格、O が抜けている場合なら目的格を使うということ。
例文①③は主格、②④は目的格です。例えば①の場合、関係代名詞の後ろは lives in Fukuoka となり、これだけでは文が成立しません。S が不足しているからです。このときに使われるのが主格の関係代名詞ということです。
実は数ある関係代名詞の中でも、that を優先的に使わなければならないパターンがあります。
それは先行詞に「限定性の強い」表現や「100%」「0%」を表す語がくっついている場合です。
前者は最上級(the -est/the most-)や only、後者は all や everything や no+名詞 などがあります。
「これが私が知っている全てのことなんです」
理由は超簡単。代名詞の that でお話したように、that には「指示」のイメージがあり、「指差す」ため、「限定」的なイメージが強い。「限定」が「100」か「0」かという両極端なイメージにもつながります。
関係代名詞には「制限用法」と「非制限用法」という2つの用法があります。
両者の違いを簡単に言えば、「カンマ+関係代名詞」という形をとるかどうか。カンマのつかないものを制限用法、カンマのつくものを非制限用法といいます。
「私には韓国に住んでいる叔父がいるんだ」
「私には韓国に住んでいる叔父がいるんだ」
非常に紛らわしいですが、①は「私」には「2人以上」の叔父がいて、「そのうちの1人が韓国に住んでいる」ことを示唆するのに対し、②ではカンマがついているため、「私」にいる叔父は「1人」だということを暗示します。
ここで気をつけていただきたいのが、「制限用法」では that の使用 OK で、「非制限用法」では使用 NG というルール。 ライティングの際は注意してください。
関係代名詞が目的格の場合、省略されるのが普通です。
This is a place which(that) I want to visit. なら、実際は This is a place I want to visit. と言ったほうが自然です。
日常会話で that は頻繁に、大量に登場します。
「それ」を英語で言おうとするたびに、「it だっけ? that だっけ?」と考えていてはスムーズなコミュニケーションをするのは難しいですよね。
今回の記事を活用し、that の持つ本質的な意味、使い方を整理してみてください。